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2017年7月31日月曜日

技術研修会『熊本地震被災現場巡検』

7月28日、大分県地質調査業協会主催の現地研修会が行われた。
県内の地質調査業協会員9社から、若手技術者を中心に総勢28名が参加し、当社からは4名が参加した。
今年の研修会は、発生から約1年半が経過した熊本地震の被災地である熊本県阿蘇市と南阿蘇村の被災現場の巡検でした。コースは、

  ①県道175号線陥没箇所(阿蘇市)
  ②阿蘇西小学校陥没箇所(阿蘇市)
  ③高野台地すべり箇所(南阿蘇村)
  ④阿蘇大橋落橋箇所・新阿蘇大橋、長陽大橋建設現場(南阿蘇村)

①、②は阿蘇市の平野部で発生した地盤の陥没現場を視察した。
本来直線であったはずの道路が波打つように褶曲している様や、耕作地の真中に発生した深さ1m程の大規模な陥没を見学した。これらの陥没については原因がはっきりしておらず、断層によるずれ、液状化、空洞陥没などによるものと推定されている。
現地では現在も応急的な盛土工事やボーリング調査などが行われていた。

陥没地






調査状況





















③の高野台地すべりの現場では、緩やかな斜面を約500mも流下した土砂により住宅が埋まるなどして5名の方が亡くなった現場です。
現地には今でも撤去されていない瓦礫が多く残っていてその被害の甚大さを物語っていた。
ここでは熊本大学の椋木俊文准教授に地すべりのメカニズムについて説明していただいた。この地すべりを発生させたのは、層厚わずか10~20㎝の「草千里ヶ浜降下軽石層」と呼ばれる水を非常に多く含んだ軟らかい火山灰質土であったことが分かっている。現地でもこの地層を実際に手に取って観察することが出来、非常に高含水であることが確認できた。
現在は周辺道路の復旧が最優先で行われており、視察した住宅地近辺では大きな工事は行われておらず、今後、残留土砂の排土や抑止工の検討が進められるものと思われる。

高野台地すべり現場

草千里ヶ浜降下軽石層

軽石状況

④の阿蘇大橋落橋箇所の現場では、阿蘇大橋西側の阿蘇カルデラ壁の急崖部で発生した大規模崩壊が阿蘇大橋を落橋させ、国道57号線とJR豊肥線を寸断させた。こちらでも大学生1名が土砂崩壊に巻き込まれて亡くなられている。
大規模崩壊面では、更なる崩壊を防止するために、滑落崖周辺の凸部となる表層や転石・浮石を排除する「ラウンディング」と呼ばれる作業が施工されていて、急峻な崩壊斜面上は非常に危険なため、バックホウの遠隔操作による無人化施工で行われていた。

阿蘇大橋落橋現場全景

巡検状況

無人バックホウによるラウンディング

また、崩壊斜面は最新技術である「地上設置型合成開口レーダー(SAR)」と呼ばれる監視システムによって、常に変位を面的に観測し二次災害の防止が図られていた。

地上設置型合成開口レーダー(SAR)

一方、阿蘇大橋の南側に位置する「長陽大橋」については8月27日に復旧工事が完了し、開通する予定。これにより現在の南阿蘇村中心部と熊本市方面との大きな迂回が解消するため、さらなる復旧の足掛かりとなることを願ってやみません。

長陽大橋ルート

今回、熊本地震から1年半が経過した被災現場を訪れたが、地震の爪痕はまだ多く残っており、訪れた現場だけでなく移動中のバスの外に見える景色の中にもたくさんの被害が見てとれた。美しい阿蘇の山々が無残にもえぐられている様は痛々しいが、その中でも復旧は着実に進んでいると分かる所も多くあり、県内外から復旧事業に従事されている方々には頭の下がる思いです。 
今年の九州も北部九州豪雨に見舞われ、大分県内では日田市などで甚大な被害が出ました。
災害は多くの被害をもたらしますが、災害から学べることも多くあります。とくに我々のような地質調査や防災工事に従事する者にとっては、大きな災害から多くのことを学び、今後の防災に役立てる責務があると思います。今後もこのような研修に積極的に参加していきたい(O君の巡検紀行から引用)。